「ヒロ、よく食べるね」
「そう?」
机の上に4段に積み重なれた重箱を見つめ、明希ちゃんが驚いている。
昼休み、私はお弁当を持参で、この美術準備室に来ていた。
ふたりでひとつの机を使い、私はお弁当を、そして明希ちゃんはコンビニで買ったらしいコロッケパンを食べる。
よく食べる、と言うけど、むしろ明希ちゃんの方が食べなすぎだ。
もくもくと箸を止めることなく食べ進め、5分後、重箱は空っぽになった。
「ごちそうさまでした」
「……綺麗に食べるなあ」
手を合わせ食後の挨拶をしていると、頬杖をついて私を見つめていた明希ちゃんが、目元を緩めてなにかをつぶやいた。
うまく聞き取れなくて、箸を片付けながら聞き直す。
「なにか言った?」
「いや。あ、そうだ。ヒロ、連絡先教えて」
「え?」
「聞いてなかったなーって思って」
明希ちゃんの言葉で気づく。
たしかに、こうして何度も会ってはいるものの、連絡先の交換はしていなかった。