「うまくいくか不安だけど、頑張ってみるから俺のこと見てて」
「応援してます」
「ありがと。
君に応援されてると心強い」
──今だと思った。
明希ちゃんが未来へ進もうとしているのだから、私も。
涙を自分の袖で拭い、クリアになった視界で明希ちゃんを見上げる。
「私も、弘中さんに伝えたいことがあって」
「ん?」
「私、歌うことが好きだったんです。
だけどトラウマができて、ずっと歌うことから遠ざかってました。
今もまだ完璧には歌えません。
だけど今、弘中さんに聴いてほしいんです」
そこまで言い切って、自分の鼓動がバクバクと暴れていることに気づく。
そんな私に、明希ちゃんは瞳をそっと細めて微笑んだ。
「すごく綺麗なんだろうな、未紘の歌声」
「……っ」
思いがけない、聞き覚えのある響きに胸が詰まる。
──あの日と同じだ。
否定するでもなく、急かすわけでもなく、寄り添ってくれる。
やっぱり明希ちゃんは明希ちゃんだ。
また涙が込み上げてきそうになって、だけどそれをぐっとこらえ、私はバックを肩から降ろし、ギターを取り出した。
明希ちゃんがベンチに腰掛け、ただそっと見守ってくれている。