明希ちゃんが一歩踏み出し、また川の方へ顔を向ける。
「俺、中学の頃すっごく嫌いだったんだよね、モデルの仕事。
だけどどうしてか分からないけど、今は挑戦してみたいって思ってる。
記憶がない頃に、なにか心変わりするようなことがあったのかもしれないな」
「……っ」
思わず息をのむ。
自惚れかもしれない。一方的な勘違いかもしれない。
だけどもし、4年前の私とのやりとりが、明希ちゃんも気づかぬうちに彼の背中を押していたとしたら──。
不意にこちらを振り返った明希ちゃんが、眉を下げて柔く苦笑した。
「君って涙脆いよね」
明希ちゃんがこちらに歩み寄り、大きな手が包み込むように私の頬を拭う。
気づけば、大粒の涙が熱い瞳からこぼれ落ちていた。
……違うよ。
あなたのせいでこんなにも涙脆くなったんだよ。
なにかが足りないアンドロイドみたいに全然泣けなかったのに、あなたが私を人にしてくれたの。