「春になると、ここの桜が綺麗に咲くんですよ」


するとこちらに顔を向けた明希ちゃんが、切なく微笑んでつぶやいた。


「桜か。もうすぐ春になっちゃうね」


春──それは、卒業の時期。


「卒業後は、どうするんですか?」


遠くに行ってしまったら、そんな不安を抱きながらそっと尋ねれば、芯の通った声が返ってきた。


「働こうと思ってる。
俺から聞いてたかもだけど、昔モデルやってたことがあってね、母親の知り合いの事務所と契約することになりそう」


それは、思いもよらない答えだった。


「モデル……?」