コップの縁まで込み上げて、今にも溢れ出しそうな感情をこらえていると、不意に隣で明希ちゃんが立ち上がった。


「そろそろ戻るね。
この後、担任が来るらしくて」


私は慌てて明希ちゃんを見上げた。


「あの、弘中さんに会えて嬉しかったです」


「俺も」


明希ちゃんがふっと笑みをこぼしたかと思うと、突然肩の上に温もりが落ちてきた。


「これ、着てて」


首元から甘い香りに包まれる。

肩にかけられたそれは、明希ちゃんが着ていたまだ熱の残るセーターで。


「そんな、これじゃ弘中さんが、」


「俺はいいから。
先輩命令だよ、未紘」


甘く言われて、不覚にもキュンと胸が高鳴る。


「……はい」


「じゃーね」