「あ、ごめん、なさい」
「んーん。
俺にとっても君はヒーローだよ」
「……っ」
「あ、でもこんなに可愛いヒーローいないか」
私の背中をさすりながら、おどけたふうに明希ちゃんがいたずらっぽい笑みを浮かべる。
か、可愛い……。
好きな人から不意をつくように言われたその言葉の威力に、思わず顔に熱を灯していると、不意に顔の横に垂れていた髪が視界から消えた。
顔をあげれば明希ちゃんと目が合って、彼の指が私の髪をすくい、耳にかけたのだと気づく。
「たくさん教えて。俺が忘れてる間のこと。
全部俺自身だから、全部受け止める」
私の目を見据えて紡がれる明希ちゃんのその言葉が力強くて、私はまた涙が出そうになってしまった。
記憶がない間のこともすべてまとめて自分だと、明希ちゃんが繋いでいた日々はなかったことにならないと、そう言われた気がして。
あなたは、やっぱりいつだって強い。
私には到底追いつけないくらい。