どう答えるのが正解なのかわからず、じっと見つめ返していると。
「笑顔は見られたけど、照れ顔は見られないなー」
明希ちゃんが不満そうにつぶやき、それからいたずらっぽく笑った。
「すっげー見たくなっちゃったから、覚悟してて」
「?」
さも意味がわからずクエスチョンマークを浮かべると、明希ちゃんが苦笑する。
「いーよ、まだわからなくて。
でも、ほんと、ヒロは音楽が好きだね」
「うん、好き。
でも、こんなに音楽を好きになったのは、〝ファン一号くん〟のおかげ」
あの日、〝ファン一号くん〟が、私の歌を褒めてくれたから。
だから私は、歌うことを好きになったんだ。
「そっかー。ナツが聴いた君の歌声、聴きたいな。俺も」
そっと唇に笑みを乗せた明希ちゃんが、小首を傾げて私の顔を覗き込んでくる。
明希ちゃんが響かせた誠実なその声音に、ドクンと心臓が揺れて。
──少しだけ、息苦しさを覚える。