「……どうぞ」
「お、ラッキー」
そう言って細長い指がひょいとつまんだのは、やっぱり卵焼き。
「ん! うまっ」
卵焼きを口に運んだ明希ちゃんの表情がぱっと輝いた。
「よかった。
弘中さんの大好物だから、多めに作ってきたんです」
「そっか。君は俺の大好物まで知ってるんだ」
不意に、明希ちゃんの声のトーンが落ち、伏せた瞳にわずかに切ない色が滲む。
あ……と、その言葉の痛みに気づいたその時、私が口を開くより先に明希ちゃんが切り出した。
「君にとって、俺ってどんな存在だった?」
──私にとっての明希ちゃんは。
〝ファン1号くん〟の時から、多分一貫して、変わらない。
「ヒーローです」
即答だった。