その途端、自分の昂りように気づき、はっと笑顔を引っ込める。
好きなアーティストのことになると、柄にもなく興奮してしまう自分の悪い癖が、つい発動してしまった。
明希ちゃん、絶対引いたよね……。
「……ごめんなさい。勝手なことして」
冷静さを取り戻し俯いて謝ると、ふいに伸びてきた明希ちゃんの指が、くいっと私の顎を上げた。
至近距離に迫る、明希ちゃんの整った顔。
否応無しに、視線が交わる。
視界を、小惑星のような揺らめく双眸が独占した。
「ヒロの好きなものを知れたことに、今俺がめちゃくちゃテンション上がってるの、気づいてる?」
「……っ」
甘い声で紡がれる思いがけない言葉に、私は声を詰まらせる。
……いいのかな、こんなにもだれかの心の中に入り込んでしまって。
私が他人との間に明確に引いた線を、明希ちゃんは軽々と越えようとしてくるから、どうしたらいいかわからなくなる。