「……そんな……」


絶句して立ち尽くす。


だけど、すぐにノートの元へ駆け寄ろうとした私の前に、小林先輩が立ちはだかった。


小林先輩の背後では、ノートが無惨にも焼き尽くされていた。

明希ちゃんが毎日、私のために書き綴っていてくれた、大切なノートが。


「私、明希のことが好きなの。
もう一度言うわ。
あんたみたいな変人が、私たちの邪魔をしないで」


──その時、心に湧き上がる抑えようのない怒りが、爆発した。


「……私がなんて言われおうと構わない」


すっかり跡形もなくなってしまったノートを見つめたまま、そんな声が自分の口から漏れていた。


そしてぐっと拳を握りしめ、小林先輩を強い眼光で睨みつける。


「だけど明希ちゃんの気持ちを蔑ろにすることだけは、絶対に許さない!」


こんなにも強く大きな声が出るなんて、思ってもみなかった。


今までに抱いたことのないほどの怒りが業火となって、私の心を焼き尽くしていく。


明希ちゃんのノートが。

記憶を失ってきた明希ちゃんの苦しみが。

こんなにも簡単に踏みにじられてしまうものであっていいはずがない。