彼女の返事を受け取ると、目を見られないまま、美術準備室に入る。

ドアを後ろ手に閉めた俺は、うつむきドアにもたれかかった。


昨日までの俺が言うとおり、ヒロ、可愛すぎた。

……あー、まじで可愛かった……な……。


少しずつ力が抜けていくように、ずるずるとその場に崩れ落ちた。


頬が濡れている。

気づけば、彼女の前ではこらえていた涙腺が決壊していた。


「ふ……う……っ」


声が漏れないように、口を押さえる。


帰る家さえも、君との大切な思い出さえも、俺は忘れてしまう。

このまま症状が悪化したら、ヒロのことを1秒も覚えていられなくなるかもしれない。


どうして、こうなってしまったんだろう。