「へー、ここがCDショップかー」
この世の中に、CDショップに入ったことがない人が存在してるなんて思ってもみなかった私は、思わず隣でCDショップを物珍しそうに眺めている明希ちゃんを凝視する。
「もしかして明希ちゃん、CDショップ初めて?」
「うん」
当たり前というように、真顔で頷く明希ちゃん。
これは……。
私の中のなにかのスイッチがパチンと入った。
「明希ちゃん、来て……!」
「えっ?」
明希ちゃんの手を引っ張り連れてきたのは、とある女性ソロシンガーのCDが並べられている棚の前。
「この人、私が大好きな歌手でね、初めて自分のお小遣いで買ったCDはこの人のものなの。すっごく綺麗な歌声で、歌詞もすごくよくて……」
まくしたてるように言い、それから視聴用のCDがセットしてあるイヤホンを渡す。
「これ! 聴いてみて!」