「どうしたの?」


こちらを振り返ったヒロの声に、意識が現実に引き戻される。


──まずい。


「……あ、いや。
ごめん。家まで送れなくなった」


「え?」


「学校って解放してたっけ。
ちょっと学校に用を思い出した」


なんとか、ここからの道順が記憶にある高校を口に出す。


コタに連絡して、迎えに来てもらうしか帰る手段がない。


「部活やってるし、解放してると思うけど」


「そっか。ほんと、ごめん」


焦りと恐怖に心が震える。

と、その時。


「私も学校までついていっていい?」


「え?」


思いがけない言葉に、そこで俺はやっとしっかりヒロを見つめた。


「ついて行くだけだから」


そう言うヒロの瞳は、そらさないほど強く俺を見つめていて。

一瞬躊躇ったものの、できるだけひとりで帰らせたくなくて、俺は頷いた。


「ん。いーよ」