モデルを辞めたいとこぼした俺に、彼女は『辞めたらいい』と言ってくれた。

そして、そんな俺を応援する、と。


今まで付き合った子はみんな、〝読モの明希の彼女〟という肩書きによって、優越感に浸ろうとする子ばかりだった。


だから辞めたい素振りを見せれば、必死に俺を説得した。

お母さんが悲しむよ、お母さんのためとは思わないの?と。

そうやって俺の家の事情を笠に、俺が読者モデルをしているという事実を守ろうとするのを隠そうともしなかった。


でも彼女は、一瞬も迷うことなく俺の気持ちを考えてくれた。

そして俺に向ける笑顔が、頭から離れなくて。



多分俺は、彼女のことを好いていた。恋愛感情で。


でも2年も経ってしまえば、もちろん彼女は彼女の2年を過ごしている。


……あー、なんかもう、本気でどうしろって言うんだよ。


不意に自棄な気持ちが生まれ、なにもかもどうでもよくなって、俺は読めと言わんばかりに机のど真ん中に置かれていたノートをめくった。