虎太郎さんが、涙が止まらず嗚咽を漏らし続ける私の背中を、優しくさすってくれる。
そして、ぽつりぽつりと声を落とした。
「最初、明希に明日も会いたい子がいると聞かされた時は驚いた。
事故に遭ってからの明希は、そういうふうになにかに執着することを、多分無意識のうちに忘れてしまっていたから。
明希が明日のことを話す姿が嬉しかった」
「虎太郎さん……」
「毎朝毎朝、高垣と過ごす日々を重ねるたびに、ノートの内容を覚えるために朝起きる時間が早くなっていた。
それだけ高垣との日々を壊さないように必死だった。
明希にとっては、全身全霊をかけた恋だっんだ」
虎太郎の言葉に、また涙が込み上げてくる。
「ふ……あ、き、ちゃん……」
一生分の涙なんじゃないかと思うほど、私は泣き続けた。
……明希ちゃん。
あなたは失われていく記憶を繋げて、毎日愛してくれていたんだね。
幸せな日々が、明希ちゃんの優しさと愛に守られていたなんて。
人として大事なものが欠けた私の心の隙間を、あなたの優しさが埋めてくれた。
私の心の半分は、明希ちゃんだった。
『俺は、昨日も今日も明日も君に恋をするよ』
今なら、ちゃんと答えられる。
本当は今日、会えたら伝えようとしていたんだよ。
〝私は明希ちゃんのことが、好きです。〟