当然、私の思考はついていけずに、手を引かれるままとりあえず足を動かす。
「うわ、連れってあの子……? 負けた……」
「なにあれ、美男美女じゃん……」
私達に向けられているのであろうひそひそ声が、背中を追ってくる。
曲がり角を曲がって細い路地裏に入り、さっきの人だかりから見えなくなった辺りで、明希ちゃんが足を止めてこちらを振り返った。
「ごめん、急に。
知り合いとはぐれて困ってたから、助かった」
さっきのあれ、困ってたんだ。
笑顔で対応してたから、困っていたとはまったく感じなかった。
とりあえず、私は首を横に振る。
人混みが苦手な私からしたら、あそこから逃げたいと思うのは当然だ。
「でもまさかヒロに会えるなんて」
ふわりと笑む目の前の明希ちゃんを見上げながら、相変わらず整ってる顔だなとぼんやり思う。
読モ、なんて単語がさっき聞こえてきたけど、かっこよくてスタイルがいい人を読モと言うのならば、明希ちゃんは間違いなくその部類だ。
キャップを被って、ダボっとしたトレーナーにスキニーパンツというカジュアルな出で立ちだというのに、それらをこの上なく着こなしている。