「でも、少し前に子どもをかばって交通事故に遭っただろう。
その時に頭を打ったらしくて、そこからだ、明希の記憶障害が悪化してしまったのは。
それから明希の記憶は1日持つのも危うくなっていた」
「……っ」
思わず言葉を詰まらせる。
ずっと一緒にいたのに、そんな事態になっていたことに気づかなかった自分が恐ろしく憎い。不甲斐ない。情けない。
「明希の鞄の中にこのノートが入っていた。
症状は相当悪化していたらしいな。
このノートを読んだはずなのに、中学の頃の記憶も含めて、あんたのことを忘れてしまったということは」
「明希ちゃん……」
「読むか、このノート。
ここにすべてが書いてある」
私は虎太郎さんからノートを受け取った。
怖いけれど、
「読みます」
向き合わなくてはいけないと思った。
明希ちゃんの、すべてに。