「今日倒れたのも、それが関係してるんじゃないかとのことだ」


次から次に押し寄せてくる情報に、思考が追いついていかない。

許容範囲を超えて、すでにあふれてる。


「でも、そんなはず、」


うわ言のような声は掠れていて、自分の口から出たものなのかも分からない。


だって、私は明希ちゃんに毎日会っていた。

その明希ちゃんが、毎日記憶喪失状態だったなんて、そんなの信じられるわけ──


はたと、必死に抵抗していた思考が止まる。


当時は流していたけれど、頭の隅に引っかかっていた、ほんのわずかな違和感がよみがえる。



『会った時、このあだ名で呼び合えば、ヒロを見つける目印になるから』



『ヒロ、よく食べるね』

『そう? いつものお弁当とかよりは、全然少ないと思うけど』



『でもまだ言えない言葉があるんだよ』

『パイナップルだっけ?』

『え……?』

『明希ちゃん、前に言ってた』

『そんなこと覚えてくれてたんだ』

『明希ちゃんと過ごす時間は大切だから。
一秒も見逃したくないくらい』

『なにそれ。泣けるね』



『明希ちゃん、つらいの?』

『幸せすぎるんだよ』

『こんなに幸せだと、明日が来るのが怖い』