「え?」
「さっき、明希ちゃん言ってました。
好きな人はいないって」
自分でも嫌なくらい、モヤモヤとした気持ちに支配されている。
明希ちゃんへの行き場のない気持ちと自己嫌悪にさいなまれ、うつむいていると、トーンを落とした虎太郎さんの声が落ちてきた。
「……そうだったのか。
高垣、この後少し時間はあるか?」
「あります、けど」
そう答えて顔をあげれば、虎太郎さんが強い瞳で私を見下ろしていた。
それは、昨日『すべてを話す』と私に告げた時の明希ちゃんの瞳の強さに似ていた。
「話したいことがある」
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