「明希ちゃんは……っ」
腰を上げ、食い気味に問う。
すると、虎太郎さんが表情を微かに和らげた。
私の不安を拭おうとするかのように。
「明希は大丈夫。
まだ目を覚まさないけど、心配はいらないとのことだ」
「深刻な状態じゃないんですね……っ?」
「ああ」
「よかった……」
命に関わるような重い病気ではなかったことに心が一気に緊張から解放され、力が抜けて崩れるように長椅子に腰を落とす。
「大事をとって、今日は1日入院することになった。
あまり広めたくはないが、明希もあんたのことを大切に思っていたからな。
高垣にだけは伝えておく」
虎太郎さんの優しさを含んだ言葉が、なんの悪気もなく胸に刺さった。
……きっと明希ちゃんは私には心配なんてされたくないんだろうという黒い思いが、心を覆う。
「……大切、なんかじゃないと思います」
気づけば、膝の上でぐっとこぶしを握りしめ、そんな言葉をこぼしていた。