悲痛な叫び声があたりに響く。と、その時。
「高垣……?
……っ、おい、どうした……!」
突然こちらに向かってきた声に顔をあげれば、偶然通りかかったらしい虎太郎さんが必死の表情で、大通りの方から駆け寄ってきた。
「明希ちゃんが、明希ちゃんが倒れて……っ」
助けを求めるように、涙声を張り上げれば、虎太郎が明希ちゃんの元に膝をつく。
「わかった。とりあえず救急車を呼ぶ。
大丈夫だ、高垣。心配するな」
さっきまで動揺していた虎太郎さんは、今はもう落ち着きを取り戻している。
もう、その声に頼るほかなかった。
「はい……っ」
救急車が到着するまで、私は明希ちゃんの体が少しでも冷えないように抱きしめていた。
そうしなければ、明希ちゃんの体が冬の風に溶けてしまいそうだった。