「えー、手厳しいな」
明希ちゃんの苦笑を最後に、会話が途切れる。
切り出すのは、今だと思った。
「──明希ちゃん」「ヒロ」
明希ちゃんを呼んだ声が、ぴたりと明希ちゃんの声と重なった。
「いーよ、ヒロから」
笑顔で先を促され、意志を固める。
明希ちゃんの目を見つめ、私は落ち着いたトーンで告げた。
「やっぱり、明希ちゃんの昔のこととナツくんのこと、教えてほしい」
「え?」
踏み込まなくていいと思ってた。
でも、今日明希ちゃんと過ごして思った。
やっぱり──。
「私、ずっと他人に興味がなかった。
でも今はあなたのことを知りたい。
明希ちゃんのことが、大切だから」
他のだれでもない。相手が明希ちゃんだから。
「いつでも待ってる。
明希ちゃんが話せるようになったら──」
聞かせて。そう続けようとした私は突然、強く腕を引かれた。
体はいとも簡単に明希ちゃんとの距離を失い、腕の中に抱き留められていて。
トサッと軽い音を立てて、右手に持っていたぬいぐるみの入っていた袋が廊下に落ちる。