「ちょっと、大丈夫……っ?」


「怖かった〜! キレられたよ、私……」


「こっわ。せっかく綺麗な顔してるんだから、ニコニコしていればいいのにね」


「ほんとほんと。
愛想ないから友達だっていないんだよ。アンドロイドちゃんは」


背後から微かに聞こえてくる、さっきの女子と友達と思われる女子の話し声。


聞こえないと思っているんだろうが、あいにく丸聞こえだ。


いつ頃からか、私は「アンドロイド」と影でそう呼ばれるようになっていた。

全然笑わず無表情だから、感情のないアンドロイド。


だけど、どこのだれが付けたのかなんて、私にとってはこれっぽっちも興味がない。


自分に向けられるひそひそ声なんて気にも留めず、私はお弁当を抱えて教室を出た。


昼休みで混んでいる廊下を、人の合間を縫って進み向かうのは、彼の元。


私が唯一興味があるもの、それは幼なじみの桐ヶ谷大( きりがや だい )だ。