「へー! なんか未紘と弘中先輩っていい雰囲気だよな〜。
あの弘中先輩とこんなにお近づきになるなんて、やっぱすげぇよ」


「明希ちゃんって、中学の頃すごく求愛されてた?」


「はは、なんだよ求愛って。
でもまぁもちろん、とんでもなかったな。
読モの方のファンも、学校に押しかけてたりしてさ」


「え?」


なんでもないというように放たれた加代子ちゃんの言葉の端っこが、溶けることなく引っかかった。


「読モって……明希ちゃんが?」


「そうだよ。
中3から始めたらしいけど、すっげぇ人気だったじゃん。
未紘、知らなかった?」


最後の方の加代子ちゃんの声は、もう耳に届いてなかった。


……そんなはずない。

読モの仕事をしてたのは、〝ファン一号くん〟──ナツくんだ。


──あれ?


頭の中がこんがらがってくる。


読モは明希ちゃん?

じゃあ〝ファン一号くん〟は?

あの日、話した話は?

どの明希ちゃんがナツくん?


今まで見逃していた、すごく大切なことに気づきそうで、でもそれに気づけるほどピースは足りてなくて。