お腹が満たされた私は、部屋に戻り、電気もつけないままベッドの上に座る。
なんとなく、もうこのまま寝てしまうのはもったいない気がして。
明希ちゃんにメッセージでも送ろうかな。
電話、なんてしたら、迷惑だろうか。
こんなふうにだれかを求めてしまうなんて。
風邪を引いたせいか、心が弱ってる。
「……明希ちゃんの声、聴きたい」
ほどよく低くて、じんわり胸にしみる、あの声が。
スマホを握りしめ、どうしようか逡巡していた、その時だった。
私の思案を遮るように、暗闇を写していたディスプレイに文字が浮かび上がった。
『窓の外を見て』
「え?」
反射的に振り返ったその瞬間、目に飛び込んできた光景に、一瞬にして胸が震えた。
だって、窓の外で明希ちゃんがひらひらと手を振っていたのだから。