そんなことを考えていたランドセル姿の私に、なにかを気づいたらしい彼が、あれと小首を傾げる。


『今日はギター持ってないんだ。
歌の練習はしないの?』


『風邪引いたから。
だけど、〝ファン一号くん〟は今日も来てくれるんだろうなって思ったから来たの』


そうまっすぐに伝えれば、彼は申し訳なさそうに表情を翳らせた。


『ごめん。せっかく来てくれたのに、今日は俺、少ししかいられない』


『どうして?』


『この後仕事だから』


黒い学ランを来て、中学生なのに、仕事?

まだランドセルを背負う私には分からないけど、中学生って仕事をするものなのだろうか。


『なんの仕事してるの?』


『んー、読者モデルってやつ』


『〝ファン一号くん〟モデルなの……!?』


モデルなら知ってる。

テレビや雑記に出てる人だ。


たしかに〝ファン一号くん〟は、私が出会ってきた人たちの中でも格段にかっこいいから、そういう仕事をするべき人材だと思う。