──ガタン。

音を立てて、押入れの中でなにかが倒れた。


自室の勉強机に向かい、明日の授業の予習をしていた私は、シャープペンを動かす手を止め、押入れに向かう。


床に膝をついてドアを開ければ、倒れたのは押入れの奥に詰め込んだギターらしかった。


ここに閉まっていたこと、すっかり頭から抜けていた。


大がいなくなってしまい、もう歌わない、そう決めて中学生の頃に押し込んだのだった。


取り出そうと、腕を伸ばしてギターのネックに手をかける。

ゴトッと重い音を立てて、ギターが押入れの中で何年かぶりに動いた。


このギターを見ると、思い浮かぶふたりの存在。

ひとりは大。そして。


「〝ファン一号くん〟……」