気づけば、明希ちゃんが指定した曲がり角に到達していた。
空気に触れた右手は、少しだけ物足りないような感覚を覚える。
……もう、終わりなのか。
素直にそう思ってしまった。
私はそっと手を差し伸べた。明希ちゃんの目を見上げて。
「じゃあ、今度は私から。
寒い、から」
するときょとんと目を丸くした明希ちゃんは、「はー」と文句をぶつけるように大きく息を吐き出し、両手で顔を覆った。
「もうたまらなく可愛すぎるんだけど。
反則すぎ」
「え?」
「勘弁、して」
口元で手を合わせ、まつ毛を伏せる明希ちゃん。
黒いピアスで飾られたその耳は、ほんのり赤くて。
「……っ」
少しだけ、動揺する。
あ、この人は本当に好きでいてくれてるんだ。
そう実感してしまったから。