私のものではない温もりが、手のひらに吹きつけていた風を遮断する。
その熱を手のひらいっぱいに感じていると、
「懐かしい」
思わず声がこぼれた。
「どうした?」
「前にこうして手を繋いだ時の、明希ちゃんの手の大きさがなんか懐かしくて」
前に大の代わりと言って、映画館に来てくれた時も、手を繋いでくれた。
少し骨ばっていて、私の手を丸々包み込んでしまう、明希ちゃんの手。
その手に包まれていると、すごく心地がいい。
すると、明希ちゃんは少しぼやけた笑みを浮かべた。
なんとなく明希ちゃんらしくない笑顔に、違和感を覚えた時。
「着いちゃった、曲がり角」
そんな声とともにするりと手が離れた。