おぼろげな記憶を呼び起こしながら、大の家への道のりを歩く。

意識して足を遠ざけていたから、こちらの方面に来るのは事故以来だ。


気づくと息を吸うのを忘れてしまうため何度も何度も浅い呼吸を繰り返し、バックの持ち手を握り直し、でも歩む足は止めない。


やがて、大の家が見えてきた。

二階建てのその家が記憶よりも小さく感じるのは多分、私の視線の高さが変わったからだ。


門扉を開けると、カラフルだった庭が殺風景になっていることに気づく。

門扉から玄関まで続く石畳のまわりに並んで咲いていた色とりどりの花は、もうどこにも見当たらない。

この庭も、大を喪って色を失ってしまったのだ。