白い凹凸の筋を残す手首が、じんと痛む。
きっと私が感じた痛みの何倍も、お母さんの心を痛めてしまった。
かさぶたを何度も何度もめくって、新たな傷を与えてきた。
いや、お母さんが受けた心の傷は、いつまで経ってもかさぶたにもならない生傷のままだったかもしれない。
「私、前を向けるようになった。
だからもう、心配しないで」
少しずつ、胸を張って立っていられる娘になってみせるから。
「未紘……」
「じゃあ、行ってくる」
それだけ残し、お母さんが言葉を詰まらせる空気を背に感じながらも、玄関のドアを開ける。
私を迎えたのは、どんよりと厚い雲に覆われた灰色の空。
空いっぱいに欠けることなく広がるグレーは、大が一番好きな色だった。
青空よりも曇り空が好きだと言う大が、なんだからしくて好きだった。