そして、翌日の土曜日。
今日のことはふとした瞬間にも常に頭の片隅にあって、意識してきた。
ほんの少し、夜が明けるのは怖かった。
だけどずっとこの日が来るのを待っていた気もする。
――今日は、大の家に行く日だ。
「あら、未紘。早いわね」
鞄を肩に掛け、外出用の靴を履いていると、朝食の食器洗いを終えたお母さんに背後から声をかけられた。
つい、水をかけられたように背筋が伸びる。
「どこに行くの?」
多分、いつものCDショップなんて答えを想定しながら、なんの気なしに聞いてくるお母さん。
本当は帰ってから報告したかったけど、とタイミングを一瞬悔やんだけれど、逆に気持ちをはっきりさせるためにも、ちょうどよかったのかもしれない。
私は斜め掛けバックの持ち手を握りしめながら振り返った。
「大の家に、行ってくる」
逸る鼓動の音を聞きながら答えれば、その瞬間お母さんの顔色がサッと変わる。
呆れたような、そして憐れむような表情。
私はこの表情に何度対面しただろう。
「またそんなこと言って……」
「大とお別れしてくる」
「え?」