聴覚が、エレベーターのドアが閉まったのを捉える。
「ヒロ」
私の視線は、至近距離から見下ろしてくる明希ちゃんの熱をはらんだ真剣な眼差しに奪われていた。
「好きな子にそんなこと言われて、首を横に振れる男がいると思う?」
どうしてだろう、声が出てこない。
見開いていた目を咄嗟に瞬かせ、思わず視線を落とせば。
「俺、本気でいくよ。
もうだれにも譲りたくない」
耳元に口を寄せ、掠れた声で明希ちゃんが言う。
心を容赦なく鷲掴みにされて、またじんと目の奥が熱くなる。
……どうしてそんなにまっすぐなの、明希ちゃん。
「まだ、大のこと、忘れられなくても……?」
「忘れようとしないでいい。
俺が絶対に振り向かせるから。
ヒロの頭の中、俺だけにするから」
「……っ」
甘い吐息がかかる耳に、熱がこもる。