目が覚めても、昨日の記憶は決して薄れない。
現実として、頭の中の一番手前にある。
『好きだ、ヒロ』
そう告げた時の明希ちゃんの眼差しが、今も鮮烈に胸を焦がす。
私の名前を呼んだのは、溜めて溜めて、ぐっと押し込めてきた感情が溢れたような、切なくて切実な少し掠れた声だった。
告白を受けることなんて初めての経験じゃない。
だけどこんなにも心を揺さぶられたのは初めてだった。
あの瞬間すべての時が止まって、明希ちゃんのことしか見えなくなった。
今日は土曜日。
休日明けの明後日、私は明希ちゃんと顔を合わせることになる。
でもどんな顔で会えばいいか、正直わからない。
告白される度、肩入れする間もなくスパッと断ってきた。
だけど、どうしてこうも私の心は返事を決めかねているのだろう。
たった一言断ればいいのに、それがあの時できなかった。
そして今も、明希ちゃんと顔を会わせた時に告白を断れる気がしない。
それはきっと、私が想像するよりもずっと、明希ちゃんのことが大切になってしまっていたから。