どこかに行っているのだろうか。
スクールバックが机に掛かったところから察するに、まだ帰宅はしていない。
明希ちゃんが帰ってくるまで、ここで待たせてもらおう。
明希ちゃんの椅子の向かいにある、私のためにと、明希ちゃんが先生から借りてくれた椅子に腰をかけようとした、その時。
スクールバックの下あたりになにかが落ちていることに気づいた。
教室に入ってきた時は、スクールバックの影になっていて気づかなかった。
きっと、スクールバックからなにかを取り出した時、一緒にくっついてきて落としてしまったという具合だろう。
しゃがみこみ、それに手を伸ばす。
すると私は、それが昨日私があげた片想い成就の紙だと気づいた。
私の紙は家にあるから、明希ちゃんのものだ。
ふたつに折られたそれを拾い上げた時。
窓から入り込んできた風が、紙を揺らした。
その拍子に折りたたまれた紙が開く。
一瞬にして、視線が、縫い付けられた。
赤に縁取られたハートの紙の真ん中、そこにひっそりと書かれた文字は。