「明希ちゃんに、これ、あげる」
机の上の片想い成就のカードをそっと指先で滑らせ、明希ちゃんの前に差し出す。
「え?」
「明希ちゃんはいつも私と大のこと応援してくれた。
だから私も、明希ちゃんの恋を応援したい。
明希ちゃんは一番大事な、友達、だから」
自分で言った言葉を、そっと反芻する。
……友達、か。なんて素敵な響きだろう。
明希ちゃんがくれた繋がりだ。
改めて実感して、その言葉を胸の中で温めるようにじんわりしていると。
「ありがと、ヒロ」
微かに目を見開いていた明希ちゃんが、カードに視線を落として、端正な顔に繊細な笑みを浮かべた。
いつもは見ていると心が温かくなる明希ちゃんの綺麗な笑顔。
けれど私は、妙な胸騒ぎを覚えた。
なぜか、明希ちゃんの笑顔がぼやけて見えたから。
それと同時にふと気づく。
……もし明希ちゃんに恋人ができたら、もうこうして会うこともできなくなってしまうのではないだろうか。
「うん」
それは確証もない予感。
けれど一気に体の中の空気が重くなる。
どこか明希ちゃんが遠くに感じられて、胸に小さな穴が空いたような気がした。
それはどうしてか塞ぎようがなくて、心を侵食してくる漠然としたモヤモヤを私は持て余した。