「高垣さん、通学方法調査票の提出、遅れちゃってごめんなさい……」
怯えたような声が自分にかけられているものだと気づき、私はそちらを振り返った。
見れば、クラスメイトの女子が、私と目を合わせないようにうつむき、プリントをこちらに差し出していて。
このプリントは、日直である私が集めて、先生の元に提出することになっているものだ。
今は昼休み。
遅れたと言っても、今日中に集めてくれればいいと言われているプリントだから、なんの問題もない。
「別に」
そう言いながら、プリントを受け取る。
すると、その女子は躊躇いがちに視線をあげながら、恐々といったように訊いてくる。
「お、怒ってる?」
「どうして? 私があなたに怒る理由なんてない」
まっすぐに目を見据えてそう答えれば、女子は顔を歪めたかと思うと踵を返し、その場を立ち去っていった。