「あっははは、まさかアンドロイドちゃんから片想い成就のアイテムをねだられる日がくるなんてな〜!」
屋上に、彼女──浜谷 加代子(はまや かよこ)の笑い声が響き渡る。
腹を抱えて豪快に笑う彼女は、なにがおかしいのか涙まで流している。
「私はアンドロイドじゃない」
ひどく冷静なトーンで否定すれば、涙を拭きながら彼女がやっと私に向き合う。
「ああ、ごめんって。
いやー、でもまじで意外。
あんた、こういうの信じるんだ?」
「毎朝ニュースの運勢はチェックしてる」
「まじか。なんか一気に親近感わいたわ」
なにか面白いものでも見つけたみたいにニカッと白い歯をこぼしてそう言いながら、彼女はスカートのポケットからなにかを取り出す。
「あたしの姉貴、占いやってるんだけどさ、その姉貴の手作りなんだ。
このカードに片想い相手の名前書くと恋が叶う」
「このカードに?」
提示されたそれは、赤いハート形に縁どられたカードだ。
想像していたものよりずっと簡素な作りだった。
どこからどう見ても普通の紙にしか見えないのに、そんな特殊なパワーが秘められているのか。