美術室に駆け込み、ふたりして膝に手をついて乱れた呼吸を整える。
そしてふと顔を上げたタイミングが重なって目が合った瞬間、風船が割れたように同時に吹き出した。
「なんでおまんじゅう……っ、ふふ」
「はは、俺も分かんない。
ぱっと思いついたのがまんじゅうだった」
「教頭先生、かんかんだったね」
「げ、あのおっさん、教頭だったんだ。
一緒に反省文でも書こ」
「――うん」
さらりと、未来の約束をしてしまった。
そしてどうしてか、それを楽しみだと思う自分がいた。
反省文なんてもちろん苦行のはずなのに、明希ちゃんと迎える未来が待ち遠しい。
「こんなに笑ったの、久しぶり。
大にも報告したい。今、こんなに笑えてるよって」
「……ヒロ」
「今度、大の家に行ってみようと思う。
少しでも、大の死に向き合いたい」
決意を乗せた声は、不鮮明だった今までのものとは比べられないほど芯が通って響いた。
大が亡くなってから一度も、大の家にもお墓参りにも行けないでいた。
でも今なら向き合える気がする。
きっと、大も待ちくたびれているはずだ。
「行っておいで。待ってるから、ずっと」
穏やかな大人びた笑顔で、明希ちゃんが私の背中を押してくれる。
居場所を作って待っていてくれる人がいるって、なんて幸せなことだろう。