これは……現実なのだろうか。


『だいぶ大きな事故だったらしくて、大くん……運ばれた病院で亡くなったって……』

 
ガシャガシャンと、肩にかけていたCDが入ったバッグが床に落ちる音を、どこか遠くで聞いた。


『――えー、本日十六時頃、この交差点でバスが大型トラックと衝突事故を起こしました。
この事故で、バスに乗っていた中学二年の桐ヶ谷大さんが亡くなったということです。
また警察に寄りますと、中高生を含めた計四人が重軽傷を負い、近くの病院に搬送されました。
バスを運転していたのは――』


この家の中で、点けっぱなしのワイドショーだけが唯一の音だった。

それはまるでテレビの中でだけ時間が流れているようで。


現場にいるらしきリポーターが緊迫した口ぶりで状況説明をしている。

だけどかえってその口調は、その事故が世間からしたら他人事であることを強く感じさせた。



──この日、私の世界は一瞬にして色を失った。