放課後。
私は美術準備室へ続く木製の廊下を歩いていた。
もう何度この道を歩いただろう。
……でもここに来るのは今日が最後だ。
そう心に決めて、私は美術準備室の前に立つと、古びたドアに手をかけた。
だれもいない静かな廊下にガラガラと音を響かせて、ドアが開く。
見慣れた景色の中で、明希ちゃんは、教室の中央に置かれた机に突っ伏していた。
「明希ちゃん?」
そっと声をかけても、腕の間から見える瞳は閉じられ、長い睫毛がその存在を主張している。
アッシュブラウンの柔らかい髪が、ふわっと風に揺れる。
寝ているのなら仕方ない。
……本当はちゃんと謝りたかったけど。
「じゃあね、明希ちゃん」
そう囁き、美術準備室を後にしようとした時。
突然、ぐっと私の手首が握られた。