そしてついにセッティングが完了し、チューニングが行われる。
「じゃあ、いくよ」
鞘橋さんの声に続いて、ドラムのスティックがカツンカツンとカウントを取ったかと思うと、背後で音楽が鳴り始めた。
ビリビリと心臓に響いてくるビート。
私は真ん中に立ち、マイクを握りしめる手に力を込めた。
……そういえば、明希ちゃんに一番に聴かせてって言われていたんだった。
イントロを聴きながらふと、そんなことを思い出した。
そして、歌い出しが迫ってくる。
最初のフレーズは、「明日の君は」。
はあっと息を吐き出し、肺に空気を吸い込むように、〝あ〟の形に口を開けた時。