「でもライブ久々だよなー」
「腕、なまってないだろうな〜?」
「やめろってー」
軽音部の人たちが盛り上がっているのを横目に、なんとなく窓から中庭に視線をやった私は、そこを歩くアッシュブラウンの髪の人物を見つけた。
──明希ちゃんだ。
少し先を歩く、背が高い銀髪の人は、恐らくというか間違いなく虎太郎さんだ。
ふたりともスクールバッグを肩にかけているところから察するに、帰るところなのだろう。
明希ちゃん、さようなら。
そう心の中でつぶやいたとき。
突然風が吹いて、明希ちゃんの柔らかいアッシュブラウンの髪が揺れた。
その風を追うように、明希ちゃんがなにげなく顔をあげる。
そして視線があたりを彷徨い──ばちっと視線が交わった。