ぎゅっと下唇を噛みしめる。

そしてスカートのお尻を軽く叩きながら立ち上がると、窓にもたれるように肘をつく明希ちゃんと目線の高さが同じなった。


「イヌ太郎、どうしたの?」


「希紗が俺のスクールバッグに入れたっぽい。
可愛いでしょ、イヌ太郎」


「うん、可愛い」


するとイヌ太郎が、両手を顔に当てた。


「ヒロちゃんにそう言われたら照れるワン〜」


もじもじと恥ずかしそうにするイヌ太郎。


そこで明希ちゃんと目が合い、明希ちゃんがふっと破顔した。

その笑顔につられて、私も思わず頬を緩めてしまう。


明希ちゃんのおかげで、笑い方を思い出せた。