「でも明希くんは、いつでもヒロちゃんの味方だってことを忘れないでほしいワン」


「……っ」


思いがけない言葉になにも言えないでいると、イヌ太郎がぱっと両手を広げた。


「ここでイヌ太郎の特技をお見せするワン!」


「えっ?」


「はっ! 必殺逆立ち!」


いきなりなにをしだすかと思えば、明希ちゃんが手首を前に捻ってイヌ太郎が逆立ちをした。


「ひっくり返しただけじゃない」


あまりに簡単な仕掛けに、思わずくすりと笑うと。

突然、ぐわぐわーっと、イヌ太郎が私の頬を全身で撫でてきた。


「わ……」


反射的に顔をあげれば、いつの間にか窓のサッシに肘をつくようにしてこちらを見下ろしていた明希ちゃんが笑みを浮かべていて。


「笑って、ヒロ」


あどけない笑顔に、思わず視線が奪われる。

まるでこちらにも移ってしまいそうな、そんな不思議な魅力に溢れた笑顔。


「明希ちゃん……」