「大、おはよう」


学校指定のローファーを履き、家を出たところで、門扉の前に立っていた大に声をかける。


「はよ」


返ってくるのは、いつもどおりの素っ気ない返事。


大のもとまで駆け寄り、トントンとローファーのつま先を地面で叩いていると、大が先に歩き始めた。


追いかけるように学校への道のりを歩きだした私は、2歩ほど前を歩く大を見上げた。


「出てくるの遅くなっちゃってごめん。
1限目の数学、テストなんだけど、テスト勉強してたら寝るの遅くなっちゃった」


へへ、とはにかむと。

大が足を止め、こちらを振り返った。そして。


「──」


太陽を背に、その表情が影になる中、なにか口を動かす。