「……えっ?」


「お仕置き」


自分が置かれた状況に、頭がついていかない。

だけど、背中にまわされた腕の力の込め方が、なぜか切実なものに感じる。

まるで、私を繋ぎ止めるかのような、そんな抱きしめ方に、鼓動が落ち着きをなくす。


明希ちゃんが私の肩に顎を埋め、私の耳元で少し拗ねたように呟いた。


「君のせいだから」


闇夜に溶けていく明希ちゃんの声。


私は心をその場に縫いつけられたかのように動けず、ただその腕に抱きすくめられることしかできなくて。


「明希ちゃん……」


そっとその名を呼ぶと、腕の力が緩んで、私の体が解放された。


まだ騒がしい鼓動の音を聞きながら、顔をあげれば。


「よし。お仕置き、終了。
これ以上はまずいね、大くんに怒られる」


私を見下ろし、いたずらをした子どもみたいにそう言う明希ちゃんは、いつもどおりの彼で。


「さ、帰ろっか」


完璧で綺麗な笑みを浮かべる明希ちゃんが、なにか言いたげに、そして切なげに感じるのはなんでだろう。

だけどなんて問えばいいのかわからなくて、私は「うん」と答えることしかできなかった。