駅から目的地の高台までは、徒歩で10分ほどだった。


高台を登りきるまでにはあたりも薄暗くなり、夜景を見るのには最適な状態になっていた。


見晴らしのいい高台の頂上に来て、柵越しに広がる光景を目にすれば、明希ちゃんが「うわ」と声を漏らした。


広場のように拓かれた高台の真下、そこには無数に輝く光があった。


たくさんの家やビルが発光している。

それはまるで蛍のように。


昔よく遊んだミニチュアのように見えるその街並みは、とても綺麗で現実離れしているように感じられる。


「めちゃくちゃ綺麗……」


そっと感嘆の声を漏らす明希ちゃん。


「よかった」


「こんな素敵な場所、よく見つけたね、ヒロ」


しんとした夜空の下、明希ちゃんの柔らかい声が空気を震わせた。


隣を仰げば、夜景に向けられた明希ちゃんの瞳が、光を映してガラス玉のようにキラキラと揺らめいていた。

まるで、作り物のように綺麗で繊細な横顔。


車道も住宅もないここにいると、まるでこの世に私たちしかいないような感覚に陥る。


そして、隣に立つ明希ちゃんもまた、この夜空に溶けてしまいそうなほど儚く感じられた。