その瞬間、意識を思いきり引っ張られるように、はっと目を覚ました。
途端に、見覚えのある風景が目に飛び込んでくる。
そこは電車の中だった。
窓の外の、すっかりオレンジの面積が狭くなった夕暮れが目に入る。眼前に広がるのは、さっきまでの夏の青空じゃない。
「あ、起きた?」
隣から落ちてきた声に顔をあげれば、明希ちゃんが笑みを唇に乗せていて。
気づけば、明希ちゃんの肩にもたれかかるようにして眠ってしまっていたらしい。
「明希ちゃん……」
「そろそろ着くよ」
ああ、やっぱり。さっきの声は明希ちゃんの声だ。
だけど、目の前の明希ちゃんは普段どおり、なにもなかったかのようで。
頬に触れた感触と明希ちゃんの声が、夢か現実かの区別がつかなくて、私は「うん」と答えてうつむいた。
心臓は、まだ早鐘を打ったままだった。