『え……?』
遅れて反応したのも束の間、大は公園の方に視線を向けたまま再び口を開いた。
『俺の記憶の中のどのページにも、お前がいるんだよな』
『大……』
『私もだよ』そう続けようとした、その瞬間。目の前の景色がぐわんと揺れた。
腿の上で目をつむる大の姿が、絵の具でぐちゃぐちゃにされたみたいにぼやけていく。
待って、これはたしかに私の記憶なのに。
これには続きがちゃんとあるのに。
「大、大……っ」
必死に不明瞭な世界に縋るように、その名を呼ぶ。
どうして、大。大、大っ……。
ぼやけた世界の色が失われていき、大の瞳と同じ、漆黒の闇が辺りを包んでいく。
まるで、夜の海に沈められてしまったような感覚。
どこに行ったらいいかわからない。
どう進んだらいいかわからない。
──大、助けて……!
と、その時。そっと、頬になにかが触れた。
下から上へ、優しく撫でるようなそんな感覚。
そして。
「ごめん、彼じゃなくて」
ふと、くぐもった世界の中で、そんな声が降ってきて、どくんと心臓が揺れた。
大じゃない、この声は──。